滝川屋
東北(福島県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
猪苗代 横向温泉
≪2011年11月宿泊≫(2泊)
こちら横向温泉滝川屋さんは1泊2食@18000ちょっとで1日1組しか客を取らない、というお宿なのですが、以前(9月)の福島湯めぐりで偵察に来た際に実は自炊湯治の受け入れもしていることをお聞きしたので、長らく訪問のチャンスをうかがっていました。
ついにそのときがきたのです。
ただし当宿、別にお高くとまっているということでもなのですが一定のポリシーをお持ちで、湯治は原則2人×2泊以上でないとダメとか、お客さんとの相性のようなものが無くもなかったりとか、いろいろハードルが高くておいそれと宿泊もできません。
必ずしも万人が宿泊できる訳でもなければ、誰もが満足できると限らない(らしき)お宿です。
気に入らない客は情け容赦なく門前払いするばっちゃ(大女将さん)が結構有名ですが、今回幸か不幸かお目にかかることなく、お宿の運営の大部分は息子さんご夫婦がやられているように見受けられました。
「現在改装真っ最中でお客さんを泊める状況でない」とか「地震以降温泉が冷えてしまった」とかおっしゃる奥さんに食い下がって、ようやく1泊自炊@5000×2泊でもぐりこむことができたのです。
なお今回は1泊自炊が@5000でしたが、今後の運営の検討中でもあり必ずしもいつでもそうだとは限らないことを申し添えておきます。
宿は「1日1組」の割には結構な規模で部屋数も多く、重厚な玄関構えのなかには大きな自然岩が鎮座して客を迎えます。
ラッキーなことに今日の泊まりは自分だけ、炊事設備もお風呂も自由に使いたい放題のお許しを頂きました。
お世話になったのは玄関向かって左手前の旧館(というか自炊湯治棟?)2階の23号室、南向きの8畳部屋+0.5畳ほど床の間の部屋です。
3方がガラス入りの障子で部屋鍵なし、落ち着いた湯治部屋風のたたずまいで、冬場は結構寒そうながら夏場の風通し(とついでに虫の襲来/笑)は素晴らしくよさそうな部屋です。
室内設備は5チャンネル映る20インチくらいの無料アナログテレビ、湯沸しポット、コタツ、ファンヒータですが、どこからがオプション暖房料の範疇なのかよくわかりません。もっとも11月初めにしては暖かく、暖房は使わず仕舞いでした。アメニティらしきものはお茶セットに座布団が7枚です。
アメニティ替わりということでもないでしょうが、女将さん(奥さん)が宿の周りで採れた天然ナメコとクレソンを差し入れてくださいました。
南側の縁側に階段がついていて、荷物を直接搬入できるのが便利といえば便利ですが、さすが年季の入った建物なので少々ガタが来ていて、不用意にドスドス歩くと建物が共鳴を起こして鳴り響きます。
寝具はマットレス×1+木綿敷布団×1+毛布×1+木綿掛け布団×1をご用意いただいていましたが、「使いたければ隣の布団部屋(17号室)から好きなように使って」とのことでありがたくそのようにさせていただきました。自家洗濯と思われる糊がよくきいたシーツが快適でした。
部屋前に炊事場があって少ないながらも炊事道具もそろっており、必要なものは貸していただけて不自由はありません。
トイレは1階まで下りるのですが、周辺は浴室前まで改装されており、小奇麗な板張りが清潔な雰囲気で昔ながらの湯治場の雰囲気はありません。玄関前付近は床を貼りなおしたり改装の真っ只中で、自分は気になりませんでしたけど確かに客をもてなすには少々落ち着かない雰囲気でした。
風呂は宿の1階からさらに2階層ほど階段を下ったところで、木をふんだんに使った女性風呂と混浴風呂があって、完全貸切・入れ替えでの提供です。
今回は他にお客さんがなかったので、女性風呂も含めてこれでもかというほど入浴できました。
混浴風呂は広々とした浴室に、2m×4mくらいで足元からお湯が湧いている湯温36℃ほどの浴槽があります。軽い泡付きを楽しみながら楽に2時間浸かれるお湯ですが、言いかえると温まらないお湯でもあり、冬場は若干厳しいかもしれません。
入浴前に脱衣所のストーブに点火するようにということでしたが、炭酸泉だからか、湯から上るときは若干寒いものの体を拭いた後は意外に冷えを感じません。面白いというか不思議なお湯です。
巨岩が脱衣所にも浴室にも顔を出しているワイルドなしつらえの女性風呂には、さらに面白いお湯が湧いていました。
震災前は白濁湯だったそうですが、オレンジ色で凝集性のある湯の花が多量に含まれる、無色透明のお湯が静かに湧いています。
正直失礼ながら汚物槽に見えなくもない(笑)ほど独特の湯の華がすさまじい湯船に、自分で自分に「世にも珍しい温泉だ」と言い聞かせて入浴するわけですが、湯をかきまぜた直後から湯の花がみるみるうちに凝集していくのがなんとも不思議な光景です。
(撹拌直後)
(1分後)
(2分後)
(3分後)
(翌朝) 湯の華が沈殿していた
湯にはとろみがあって泡付きもなかなかなもので、それを楽しみながら何度も体をさすったりかき混ぜたりしていると、いつの間にか1~2時間たってしまいます。
自分もかなり多くの温泉に入ってきましたがこんなのは初めてで、まさに掘り出し物の一湯となりました。地震の影響でこの湯が出始めたようなのですが、いつまで続くのか今度はどうなるのか、とても気になります。
現在、もう少し気軽に泊れるような運営にするとか、いろいろと今後の方向性を検討されている真っ最中なのだそうで、その成り行きも気になるところです。お宿の良いところは残しながらより良いお宿になって、ますますお客さんに満足してもらえるようになっていただきたいものです。
いろいろな改善アイデアをお持ちなようだったので、これからどんなふうに変わっていくのか、楽しみなお宿です。
おとなしいわんこも、またのお越しをまっているようでした。