古遠部温泉
東北(青森県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
平川 古遠部温泉
≪2012年09月宿泊≫(1泊)
秋元温泉に別れを告げる旅のついでといってはナンなのですが、3年前に日帰りで入湯したことがありながら未宿泊だった古遠部に泊りました。むろん自炊湯治宿泊@3900(オール込み)です。
実は場所がらトイレはボットンに違いないと思いこんでいて、都会生活者としては若干苦手なのでナニゲに避けていた(笑)のですが、そろそろ新規開拓もネタが乏しくなり訪問に踏み切ったのです。
電話で宿泊予約をしたらこれまた若いしっかりした感じの声の女性の応対で、隔世感のある湯治宿イメージとのギャップにちょっと違和感を持ちながらの訪問でした。
正式なチェックイン時間はよくわかりませんが、今回電話を入れたら13時から14時ならもう入室OKとのことで、湯のハシゴをするのもそこそこに14時に宿入りしました。
まぁ湯のハシゴといっても、秋元温泉で朝湯+帰る前別れの湯、大鰐の大湯で昼湯しただけですけどね。
客室は帳場階からひとつ階下の浴室階に5室ほど、帳場階に数室とこじんまりしたお宿です。
今回ご案内いただいたのは浴室階の「梅の間」でした。
共同炊事場というほどの規模ではない宿泊者用炊事場も同じフロアの浴室寄りにあり、部屋の前にはソファもあります。
梅の間は廊下と外鍵つきの木のドアで仕切られた踏み込みのない部屋で、廊下にスリッパを脱いで入室するあたりは湯治宿のかすかな名残でしょうか。
6畳客室+100リットルほどの冷蔵庫・鏡台が設置された窓側の板の間2畳の部屋で、やけに真新しく、秋元温泉クラスの年季の入った客室を想像していたので何かの間違いじゃないかとかなりアセりました。小心者なので(笑)
窓に厚手のカーテンと網戸があって、板の間/畳部屋は障子で仕切られています。
室内設備は和テーブルと座布団、BSで9チャンネルと地デジで5チャンネル映る16インチ無料デジタルテレビ、時計、ポット&お茶セット、扇風機といったところです。
この立地でBS無料テレビがあるのもタマゲます。
アメニティがこれまた意外に充実でティッシュ、浴衣、歯ブラシ、フェイスタオル、使い捨てスリッパでした。
予想をある意味甚だしく裏切ってくれる、充実快適な宿泊環境です。
日中下界では楽に30℃ありましたが、携帯電波さえ届かぬここまで来ると日中でもさほど暑い印象はなく、夜になると至って快適に過ごすことができます。
入室時点ですでにマットレス+木綿敷布団+羽毛夏掛け布団がセットされていました。
押入れにはもう1セットあります。このお値段で羽毛掛け布団はとても頑張ってますね。
掛け布団シーツは押し入れの中の掛け布団には付いていませんでしたので、毎回洗濯かもしれません。このお値段でそうだとしたらもうほとんど脱帽モノです。
軽い掛け布団、ひんやり心地よい山の空気、厚手でしっかり遮光するカーテンのおかげで心地よい湯疲れもあって朝までぐっすりでした。
コンセントはテレビ脇2口×1(TVとチュナーで使用)、板敷き部冷蔵庫奥に2口×1、客室内壁に2口×1で、結構充実です。
風呂は男女別内風呂が客室階にあって、日帰り含め結構人が絶えません。
脱衣所には扇風機・体重計とお決まりパターンなのですが、浴室にはこういう秘湯的湯治宿としては珍しくシャワー&蛇口ブースが1基あり、しかもボディーソープ・シャンプーありです。
シャワーブースは3年前にはなかった設備で、しかも当時湯口周りは析出物がコテコテに成長していたのですがそれが綺麗にハツられていました。
湯船は2m×5mくらいの湯船に43~44℃の鉄臭い湯が景気良くじゃんじゃん&ドボドボで、これは嬉しいことにお変わりありませんでした。
共同炊事場設備は流し兼洗面(水蛇口2+温水蛇口1)、無料2口コンロ×2、電子レンジ、共同冷蔵庫で、それほど広くはありません。若干の鍋釜はありますが、食器は見当たりませんでした。食器洗剤&スポンジはありますが、あまり自炊宿泊のニーズはないのかもしれません。
なお男性浴室横に洗濯機があります。
少々驚いたのは、立地からしててっきりボットンだろうと思っていた浴場横のトイレが、簡易水洗・男女共用ながら洋式・温水洗浄タイプでトイレクイックル常備だったことです。
ただし帳場階のトイレはボットンのままです。当地は青森屈指の寒冷地で水洗水さえ凍ることがあって、ボットンを残しておかないと用をたすことさえできなくなる危険があるからなのだそうです。
宿のご主人のお話によると、湯治宿に超逆風な経営環境の昨今で一時期経営が破綻近くまでいって、その状況から抜け出してなんとかこの地の温泉を盛り立てたいと、2012年の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」とやらを目指したのだそうです。たぶん宿のオペレーションなども、従来の湯治宿スタイルから大幅に変えざるを得なかったことと思います。
リフォームもやってちょっとだけ利用料金も上げざるを得なかったようです。
これまでの宿のどこをアイデンティティーとして守るか、じゃんじゃん&ドボドボのお湯を遺すために変わるのか、世の中に迎合せず従来スタイルを頑なに守るのか、さぞかし葛藤があったことだろうと思います。
個人的には無くなっちゃぁ元も子もないのだし、どのみち大昔からの湯治客はどんどんあの世に旅立ってるんだし、であれば新しいお客さんを新しいスタイルでお迎えすることにしてもアリだと思うのです。
世の中には、景気回復対策してもらわないと上がったりだと文句を言う経営者は多いのですが、客が来なくなったのは自社・自店舗の魅力が薄れてしまっているからなのだ(あるいは今のお客様のニーズから取り残されてしまっているのだ)、という事実に気づいて変わろうとする経営者はとても少ないように思います。
100選に合格してまだ日が浅くてそれを知って来たお客さんもまだボチボチらしく、リフォームしたことさえまだほとんど知られていないようですが、玄関にある自由帳にはお宿に来たお客さんの満足が書き連ねられていました。
これからどのように変わっていくのか、大いに楽しみなお宿だと思います。
ついでですが、電話で宿泊予約の応対をしていただいたナニゲに若いしっかりした感じの声の女性は、どうも女将代理という名札をつけて接客していた女性と思われました。
これまた意外に青森のド田舎の湯治宿らしからぬ、今っぽい女性でしたね。
ご主人のお話しをお聞きする機会に恵まれましたが、まぁホント、たいへんなご努力をされながら湯を守っておられます。変な客に荒らされるのも困るのであまり繁盛しすぎるのはいかがなものかとは思いますが、でもこの湯宿の良さがわかる人がたくさん宿泊して、さらに活気のあるお宿になっていっていただきたいものだとつくづく思います。