後生掛温泉
東北(秋田県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
鹿角 後生掛温泉
≪2013年11月宿泊≫(1泊)
鹿角八幡平は10年くらい(?)に何箇所か日帰りで冷やかしたことがあるのですが、いまだ近辺の安宿に宿泊したことはなくて懸案にはなっていたので、このたびこの近辺を一気呵成に攻め落とすことにしたのです。
近辺ではここ数年、かつて日帰り入浴した温泉宿も含め何軒もの温泉宿が廃業していますが、昔からの自炊湯治宿である後生掛は前から宿題の一つでした。
これまで当宿を攻めなかった理由はオンドルです。
オンドルというのは当宿の場合温泉蒸気熱を利用した客室床暖房で、実は自分はオンドルが苦手なのです。というか正確にはオンドルは未経験なのですが、電気毛布とか電気敷き布が苦手なのでおそらくオンドルだと快適に眠ることは困難だろう、と容易に想像でき、よって近寄りがたいイメージを持っていました。
とはいえ東北温泉湯治を極めるヒトとしていつまでもスルーもできず、当宿を攻めるなら中途半端に寒くてオンドルもさほど暑苦しくなく、かつ行く気にもなれないほど寒くないこの時期を選んで訪問を決行したのです。
宿泊予約電話では当日は空いていて12時過ぎたらチェックインOKとお聞きしていたので、目標到着時刻を13時として行動してほぼ予定通りで到着しました。お宿の都合によるのでいつでも早着できるとは限らないのは言うまでもありません。
アスピーテラインは折からの寒波による降雪があったものの、除雪体制がしっかりしているのでホイホイ走れます。
といっても薄っすら雪というか氷はかぶっているので、スタッドレスでないとバリバリに滑ります 。
トロコ付近で地元ナンバーの安くなさそうなミニバンが電柱に自爆攻撃して昇天している横を通過しましたが、この時期このあたりで事故るとレスキューもなかなか来ないだろうから面白がってケツを振って走ったりなどせず、とにかく安全第一で運転です。
後生掛は単一宿ながら、旅館部の下に5棟の湯治部があるとても大きい湯治場です。
2食付き旅館宿泊の場合にはアスピーテラインから後生掛に入って最初の目の前の建物に入りますし、湯治の場合には旅館部の向かって右側の坂を下って、後生掛温泉湯治村に入ることになります。
最大200人(もっとかな?)くらい自炊湯治できそうな勢いの規模で、湯治村という名前もダテではありません。
混んでいなければ、湯治村湯治部フロント前の駐車場(10台前後)に駐車できます。
この際は湯治部フロントに車のキーを預けるルールです。
フロントでチェックインすると客室に案内して頂けますが、今回はオンドル大部屋自炊宿泊を希望したので、手ごろな大部屋を1~2か所案内してもらいました。
宿泊料金はオンドル大部屋だと1泊@2000、これに必要なら寝具レンタル(布団1日@100、毛布1日@100、枕1日@30)が加わり、都合¥2230に消費税¥112と入湯税¥70が乗っかって合計¥2412といった感じです。
今回はフロント階段降りてすぐ、比較的宿泊者が少なく静かそうだった極楽寮の一番奥の右側に厄介になることにしました。
ほかに案内していただいた鈴蘭寮も滞在者が少し多かったもののおおむね似たような構造になっていました。
ちなみに後生掛の自炊湯治部屋としては、オンドルの大部屋、オンドルの個室、オンドルでない普通の個室、の3パターンがあります、
やはり後生掛の湯治の原点であるオンドル大部屋で夜を明かさないと、自分としては後生掛に湯治で泊まったとは言えません。
我が家には「汝、オンドル大部屋に寝ずして後生掛を語ることなかれ」という家訓があるのです。
極楽寮では入り口で下足を脱ぎ、中は素足で過ごします。
中央に通路があって、その両脇にオンドルで幅3mくらいの滞在スペースが広がっている、建物奥行き20mくらいの大部屋構造です。オンドル滞在スペースは建物中央付近に仕切りがあり、建物内で4ブロックに分割されています。
窓側に所持品類を置くための造りつけの棚があるほかは備品は皆目何もありません。
窓はカーテンなしの二重窓で、朝も遅くまで寝るのはまぶしすぎるでしょう。
棚に白線が引いてあるのがおおむね一人当たりの領土の目安なのだそうで、繁盛しているときには一人当たり占有幅1.5mくらい・1ブロックあたり10人ほどで湯治することになるようです。
幸い空いていたので、2~3人分/4.5畳くらいを優雅に占領しましたが、満員の時はこちらの寮で40人ほどが同居ザコ寝生活を送ることになるのだろうと思います。
コンセントは造りつけ棚のなかに何箇所か2口が設置されていますが、白線の仕切りに一人ずつの満杯宿泊状態となった場合には、人数に満たないため利用が競合します。
今回の滞在では極楽寮は比較的すいていて、入り口側の片側ブロックに1名でもう片側は空き、奥側ブロック片側に2組3人でもう片側は自分だけ、という混み具合でした。
ほかの3組はいずれも長期滞在に見えて、各々の滞在スペースはほぼ自宅化していました。
寝具もオプションでレンタルしました(ていうか、さすがのワタクシも寝具をかついでまで湯治場めぐりはやりませんので)。
が、敷布団というよりは安物の座布団を長尺にしたようなものと、毛布と藤製の枕です。
この敷布団が厚みほんの3cmほどと実に薄っぺらくて、床がそもそもコンクリートボードかなにかに合繊の畳表を敷いただけでやたら硬いので、実に寝心地が悪いのです。
まぁオンドルの設計思想からして床の熱が人体に伝わる必要があって、そのため熱を遮らない程度の薄さでないといけない、というリクツはあるのでしょうが、あまりにゴツゴツで、夜中に何度も目が覚め翌朝はしっかり寝不足でした。
藤製の枕は過去数百人の湯治客が頬ずりをした年季のあるものだと推定でき、その数百一人目になりたくなければバスタオルかなんかを巻いて使用するわけですが、この枕もなかなか硬くて寝心地の悪さを助長してくれます。
11月中旬近くで屋外は雪が積もっていますがオンドルのおかげで寮内は半そでTシャツでも問題なく、掛け寝具は毛布1枚あれば十分です。
夏の盛りとかだったら脱水症状か熱中症になるかもしれませんケド。
他の湯治客さんたちはやはり薄っぺらい敷きものと毛布かタオルケットかで過ごしています。
正直、硬くて薄いゴツゴツの敷布団が苦痛かどうかが、まずオンドルに適応できるかどうかの第一関門になるといえるでしょう。
もしそれがOKでも敷き寝具の下から熱が上がってくる独特な環境で熟睡できるかどうか、が第2の関門になります。
ちなみにオンドル大部屋ではキャンプ用銀マット等は使用禁止らしいので、断熱加工はできないと考えるべきです。
自分自身はいずれのハードルも適応困難で、オンドルは自分に合ってない確信が持てました。
ちなみに第3のハードルがあるとしたら(人によっては最大の難関でしょう)、オンドル大部屋はほぼプライバシーゼロなことです。
もう少し宿泊料を積み増してオンドル個室宿泊するテもありますが、大部屋の場合はカーテン囲いさえ禁止らしいのでほぼ素通し全面丸見え丸聞こえとなります。大部屋消灯21時は順守されているようですが(というかその前に湯疲れで眠くて寝てしまったのでよくわからないのですが)、他の客のラジオの音、話し声、放庇やげっぷ、食事の様子など、ありとあらゆるすべてが筒抜けになります。
消灯21時なのがせめてもの幸い(ないしセーフティネット)ですが、寝起きの良すぎる年寄りはたぶん3時~4時頃になるとゴソゴソ活動を始めるでしょうから、それで電灯など点けられた日には最悪でしょうね。
とはいえ、そういった数々の試練を乗り越えて初めて、後生掛を深く悟ることができるワケです。
若干覚悟はしてはいたものの、今回の滞在ではそういう人的理由に起因する障害は自分はさほど気にならずに済みました。お互い様ですし。。。
極楽寮には建物奥突き当たりに寮専用炊事場があります。
冷蔵庫なし(流水で冷やす)、電子レンジなし、コンロ×7基、温・冷水蛇口×5くらい、洗濯機×1、食器洗い洗剤/スポンジありでした。鍋釜・調理器具・食器類は基本的に持ち込みか有償貸し出しになります。
後生掛はだいたい全面的にそんな感じで、冷蔵庫がないのはなかなかつらいところです。
滞在スペースのコンセントと炊事場のガス、水道は自由に使えます。
テレビは寮にはなくて、鈴蘭寮の中ほどに談話室があってそこに共用BSテレビがありました。
寮にもアンテナ線が引き込まれていましたが、ちゃんと地デジ電波が伝わってきているのかどうかは不明です。
風呂は湯治部フロントの階段を降り切った自炊棟(鈴蘭寮)を左に突き当たったところにあります。
後生掛は風呂は1箇所だけで、湯治部だけでなく旅館部のお客さんもこちらに入浴します。
残念ながら後生掛も最近は浴室内撮影禁止で内部の写真を取得できませんでしたが、そもそも浴室内は湯気がもうもうでしかも常時入浴者がいて、撮影できる状態ですらありませんでした。
縦横20mくらいの古めかしい木造の湯小屋の中に箱蒸し風呂、サウナ、泥風呂、うたせ湯、神経痛の湯、火山風呂、露天風呂と、小さい浴槽がいっぱいあって、まさに200~300年前のスーパー銭湯か温泉保養センターといったイメージです。
湯は表示は硫黄泉になっているようですがそれほど硫黄は感じず、程度の違いはあるものの基本は泥混じり酸性湯で、泥風呂は38℃くらい、他は42℃くらいになっています。
湯・水の蛇口が10基とボディーソープがあり、上がり掛け湯槽もあります。
風呂の雰囲気が気になる方は、公式ホームページや撮影OKだった頃に訪問された方のブログなどを探してください。
小部屋か大部屋かはともかくオンドルに耐性があるとしても、冷蔵庫がないことは長期滞在には極めて不便ですね。
今回滞在なぞはちょうど雪の降り始めだったので、車の中にでも食材を放り出しておけばナマ物でもそれなり長持ちしますが、寒い時期でもなければ流水冷却だけではなかなかラチがあかないでしょう。少なくとも風呂上りのビールは歯茎がキリキリするくらいのヤツでないと(笑)。
極楽寮の向かい側に泊まっている1組(60代後半のじいちゃんと高校くらいの孫)なぞは夕・朝と、カップラーメンと米を食べてるようでした。
自分はさすがに湯治でカップラーメンを食べる気にはなりませんが、保存環境が不十分だとしてもお願いだからせめて缶詰とかレトルト食品にしてほしいところです。
ちなみにカップめんや一部生鮮品・飲料類は帳場前や旅館部売店で購入できますし、必要なものがあれば帳場にお願いすれば買い物代行していただけるとのことでした。
確かに滞在費用は安いし後生掛的な湯治の伝統文化の味もわかるんだけど、個人的にはもう少し便利で居心地(寝心地)いい湯治場のほうがいいな、という印象を拭えませんでした。
まぁそもそもオンドル環境に適応できるなら後生掛は有力な候補になりえるものの自分はどう考えてもオンドルが苦手なことが確実になったし、あくまでも好みなんですけど。
今回はちゃんと鹿角花輪で食べ物を仕込んで臨みましたが、予想通り近辺で食材を仕入れることができる店舗はほとんどなく冬季だと2.6km離れた青沢商店(青沢商店の場所はこちら)というミニスーパー一か所だけ、夏だともう1箇所2km強はなれたキャメルマート(キャメルマートの場所はこちら)も営業、という感じです。
帳場にお願いすればお宿の買出しの際に買い物代行していただけるようですが、基本的にそれなりに用意周到な準備が必要となります。