ITコーディネータ システムアナリスト 西川雅樹のホームページ


東川原湯旅館
東北(宮城県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
大崎 鳴子温泉

≪2014年03月宿泊≫(1泊)

東川原湯旅館は2014年03月末で廃業となりました。心から残念です。

かつて2食付きで1泊お世話になったきり、当ホームページのお宿の描写も不十分なまま長らく不義理をしていたのがこちらのお宿です。
宮城 東川原湯旅館

なぜってこちらのお風呂はあまたの湯宿を渡り歩いてきた自分ですらさすがに腰が引けるほどで、何がすごいって、湯の硫黄成分が並みはずれてきつくて浴室の床、壁、天井、扉と大部分ありとあらゆるものが硫化腐食しており、前回2008年訪問当時ですでに少なからずこの世と思えないビューだったため、正直近寄りがたかったのです。

ではいったいなぜなぜ今回それにもかかわらず訪問する気になったかというと、当お宿が2014年3月いっぱいで廃業するらしき情報を耳にしたからです。
ある種この世のものと思えない風呂場とはいえ、心ある温泉ファンとしてもう間もなく永遠に入浴も宿泊もできなくなる宿があるのに、指をくわえて遠くから見送るわけにはいきません。

そんなこんなで、廃業まであとほんの数日に迫った3月下旬に自炊宿泊オール込み@4000で宿泊を強行することにしました。

昔2食付きでお世話になった時には、自炊宿泊は¥3000くらいとお聞きした気がするのですが、その後値上がりしたのでしょうか。
宮城 東川原湯旅館

とてもじゃないが一般受けする宿ではないのでさぞかしいつでも泊まれるだろうとタカをくくっていたのですが、なんと3連休は満室というアリエナい状態であることがわかり、連休最終日の夜・翌平日にかけての宿泊となりました。
事情を察知したファンが考えることは、だいたい皆同じなようです(笑)

14時チェックインできるとのことだったので、宿に到着したのは13時半頃でした。
宮城 東川原湯旅館 看板

車は玄関前に停めたのですが、後で聞いたら冬季だと屋根から雪が落ちて直撃するので夏場に限り玄関前駐車OKなのだそうです。

玄関を入っておおかたのクチコミ通り呼べど叫べど誰も出てこないので、予定通りひとまず館内の記録写真を取りまくって14時前に帳場に戻り、女将さんの存在を確認してチェックインをしました。
宮城 東川原湯旅館 玄関
宮城 東川原湯旅館 玄関
宮城 東川原湯旅館 玄関
宮城 東川原湯旅館 玄関

当日の宿泊者は自分のほかに朝早めに出かけるお客さんが一人いて、そちらの応対の都合上こちらはゆっくりチェックアウトしてもらうほうがいい、とのことだったので11時前くらいまでゆっくりすることにしました。

ご案内頂いた部屋はさくらの間、1階廊下を東に進み、突き当たる手前を国道47号線側に左折した3部屋ほどの離れ客室の1室です。いちばん国道に近くて通行車両の音がもろに聞こえる、もしかするとちょっと条件の良くない部屋かもしれません。
宮城 東川原湯旅館 1階廊下
宮城 東川原湯旅館 さくらの間

しっかり湯疲れして夜は爆眠だったので気になりませんでしたけどね。

あとで館内探検をした印象では、現在宿泊に供しているのは東側の6室だけのように見受けられました。
宮城 東川原湯旅館 旅館見取り図

外鍵のかかる格子戸をあけると踏み込み1畳、ふすまで隔てて10畳敷きの客室になります。床の間が1畳、窓側に板敷きで4畳ほどの広めの濡れ縁があってキッチンが設置されています
宮城 東川原湯旅館 さくらの間
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内

室内設備は和テーブル、お茶セット、床の間に19インチほどで6チャンネル映る無料地デジテレビ、たぶん使えないセントラルヒータ、ファンヒータといったところです。
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内

濡れ縁の小ぶりのキッチンには、鍋釜薬缶調理器具、食器洗い洗剤、無料ガスコンロ1基、そこそこ食器の入った食器棚、80リットルくらいの冷蔵庫などがあります。
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内
宮城 東川原湯旅館 さくらの間室内
宮城 東川原湯旅館 さくらの間備品類
宮城 東川原湯旅館 さくらの間備品類

炊事場はそこそこ使い勝手良く、だいたいどこの部屋も同じような構造に見えました。

国道47号線に面した窓はシングルガラスでカーテンなしでした。
アメニティは一切なしでしたがお着き菓子「もなかフランセ」がありました。
宮城 東川原湯旅館 お着き菓子
コンセントは部屋東壁に2口×1、床の間に1口×1+2口×1、濡れ縁流し脇に2口×1と冷蔵庫脇に2口×1と充分です。
押し入れは部屋廊下側で、木綿敷布団×1、木綿掛け布団×1、毛布×2がはいっていてセルフ敷きになります
宮城 東川原湯旅館 さくらの間部屋鍵
宮城 東川原湯旅館 さくらの間部屋鍵

なお共用の炊事場とか共用の電子レンジなどは見当たりませんでした。

当宿にはかつて男女別芒硝泉浴室、貸切硫黄家族風呂、混浴硫黄大浴室がありました。
宮城 東川原湯旅館 浴室アプローチ
宮城 東川原湯旅館 泉質表示

男女別芒硝泉浴室は、かつては男女各1室の浴室があったのですが今回は昔の女性浴室だけ供されていました。
宮城 東川原湯旅館 芒硝泉浴室アプローチ
宮城 東川原湯旅館 芒硝泉浴室

無色透明無味無臭ながら、湯をかき混ぜると茶色い細かな湯の花がこれでもかというほど湧きあがってくる1.5m×2mくらい・43℃くらいのお湯です。温泉成分の関係か石鹸との相性はあまり良くなさそうで泡立ちにくいお湯なのですが、こちらにも蛇口・シャワー無しで、シャンプーなし石鹸あり、貸し切り使用でした。
宮城 東川原湯旅館 芒硝泉浴室脱衣所
宮城 東川原湯旅館 芒硝泉浴室

混浴硫黄大浴室の横には供用をやめて久しい貸切硫黄家族風呂(の遺構/汗)があります。
宮城 東川原湯旅館 貸切硫黄家族風呂跡
大浴室と同じ湯を張っていた往時の貸し切り湯なのですが、2008年時点ですでにアルミドアのドアノブが腐食して抜けてしまい、開け閉めもままならなくなっていたのでした。
宮城 東川原湯旅館 貸切硫黄家族風呂跡

今更改めてすごい浴槽に入ったものだったと思います。。。

混浴硫黄大浴室には42~43℃で鳴子でも濃さスペシャルな少し石油臭のする白濁硫黄泉をたたえた、3.5m×2mくらいの将棋型の浴槽があります。給湯量は数リットル/分程度なのですが強烈な硫黄臭のお湯です。
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室脱衣所
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室入浴心得

蛇口・シャワー無し、シャンプーなし石鹸なしです。
入浴する時は脱衣所外にスリッパを脱ぎ、脱衣所前にスリッパがあるときは他のお客さんが入浴しているサインなので無くなるまで待機する貸し切り入浴システムになっています。
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内

洗い場の床、天井、壁、柱、アルミサッシのすべてが強烈な硫黄のために腐食していて、まるで風の谷のナウシカに出てくる、腐海に沈む直前の村の家を彷彿とさせます(汗)。
浴室入り口のアルミサッシなぞまともに開け閉めできません。
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内

なのに入った後の我身の硫黄の残り香がとても幸せに思える湯でもあります。
宮城 東川原湯旅館 混浴硫黄大浴室内

硫黄泉は一部ディープな硫黄泉マニアにとっては入浴した数日後まで硫黄臭が残る知る人ぞ知る泉質なのですが、なにぶん浴室のあの腐食度合いは一般温泉ファンにはハードルが高すぎだったといえるでしょう。
共用部もけっこう老朽化が激しく、正直あまり行き届いていないように見受けられるところも少なくありませんでした。
女将さんお一人でやられているから手が回らないというか、お一人だからそれなりに運営してこれたところもないでもないでしょう。
女将さんもチェックイン時どこにいるかわからないし、今回はそうでもなかったが宿泊予約電話を何回掛けても誰も出ないとか、オペレーションに辛い部分はないでもないようでした

残念ながら300年続いた当宿ですが、チェックアウト時に女将さんにお聞きしたところやはり3月末で廃業する、とのことでした。
ご自身がそこそこご高齢で跡継ぎがいないので、身体が言うことを聞くうちに宿や身の回りをきちんと整理したい、という典型的な中小企業の事業継続の課題が表面化したかたちです。
根掘り葉掘りお聞きしたところ、建物は他の人に引き取ってもらうことになりそうだが宿泊や日帰り入浴などは(その方は)されないだろうという残念なお話でした。

実はひそかに高評価な硫黄泉は、源泉は姥の湯旅館さんと共用のもので、お隣に行けば引き続きこの湯を楽しめることもわかりました。
もっとも姥の湯旅館さんの硫黄湯と当宿の硫黄湯はかなり浴感が違っていて、それについては湯の管理の仕方が違いうからだろう、とのことでしたけど。
芒硝泉も姥の湯旅館さんとの共用で、姥の湯さんは独自源泉とブレンドして使っているとのことでした。

自分がこの記事をホームページにアップする頃には、東川原湯旅館さんは思い出話の世界に行ってしまっています。
宮城 東川原湯旅館 遠景
まぁこういうお宿は日本広しといえども指折り数えるほどしか残っていないでしょう。
とても残念ですが、300年の旅館営業お疲れさまでした、と、見送るしかないのです。

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