大深温泉
東北(秋田県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
仙北 大深温泉
≪2014年06月宿泊≫(1泊)
昨年11月に秋田八幡平に来て銭川・後生掛と古いオンドル湯治場を巡ったのですが、時すでに遅くこちら大深温泉は冬季休業に入っており、覗くことさえできませんでした。
それが帰仙後ジワジワと悔しく思えてたまらなくなり、冬季休業が明けた6月に、半年の想いをぶつけに泊まりに来たのです。
7月とか8月になったらきっとオンドルは灼熱だわ、ブヨは出るわで快適な滞在は自分には難しいと考えて涼しいうちの訪問です。
もちろんオンドルが好きになったわけではまったくありません(汗)。
銭川・後生掛で苦手なのは実証済みですが、各地の湯治宿がどんどん廃業するこのご時世、ある意味泊まれるときに泊まらないとこの先お世話になれる機会があるかどうかわからない、という危機感がヘタレな自分に勝ったのです。
こちらのお宿は大部屋雑魚寝の自炊1泊@2000+入湯税¥150のみの受け入れで、娑婆で食材を調達してからの訪問になります。
寝具類、調理器具類、ガスコンロは有料レンタルで借りることが出来ますが持ち込みOK(電気製品は持ち込み料が必要)、ただし敷布団に限ってはレンタルさえもありません
田沢湖で昼食や入念な食材調達を済ませて大急ぎで大深にたどり着いたのは14時、事務所棟でチェックインを済ませてご案内頂いたのは奥側のオンドル大部屋です。
こちらは事務所棟前を奥に進むと左手に浴室棟があり、浴室棟の角を曲がってすぐ右手がトイレ棟、進んで左手側が水場・流し棟、さらにその奥が食器洗い用蛇口です。
右手にはオンドル湯治棟敷地が2棟分、手前にも昔オンドル棟が建っていた形跡があります。
ただし2棟のうち手前のオンドル大部屋は今年の雪でつぶれてしまい、7月稼動開始に向けて再建工事中でした。
事務所脇に一輪車があるので、100mちょっとある駐車場~大部屋の荷物搬送もらくらくです
こちらのオンドル大部屋は中央通路を挟んで両側2.5mほどの滞在スペースがある、16~17mくらいの奥行きの建物です。
建物が1棟しかないので、今回の滞在時はほぼ満室フル稼働状態だったようです。
中央通路両脇の柱(全部で6本)だけに2口コンセントがあり、ほかは何もユーティリティはありません。エネルギーが必要なら電源延長ケーブル持参は必須ですが、常連客がコンセント前に陣取っているので上手に1口譲ってもらう必要があります。
窓際に幅30cmくらいの棚が窓の上と床面近くにあるのだけが、荷物の置き場です。
床に直接荷物を置くと、オンドル熱と湿気で傷んでしまうかもしれなくて要注意です。
窓にはカーテンなんてものはついていませんので、朝5時頃には思いっきり明るくなります。
だいたい雰囲気的に今回の滞在の一人あたりの領地は幅2mくらいの感じで、自分の領地は一番奥から3mほど手前でした。というか常連が柱のコンセント前に陣取るので、それで宿泊グループのピッチが決まるような印象です。
この時期まだ外気温は低くて、突き当たりの壁際は壁が冷えていて寒いようでしたが、3mほど中央寄りの自分はほどよく涼しくて快適でした。
当宿はキャンプ用の銀シートは禁止されていないので毛布と銀シートを持参し、オンドル熱もさほど暑苦しくなく程よく過ごせました。
こちらは後生掛の大部屋に比べてだいぶ床がソフトで、硬い寝床が苦手な自分でも銀シート2枚くらいあればかなりゴツゴツ感は軽減されて1~2泊なら耐えられる感じです。オンドル床の機密性が低いのか床下からかなり湿気が上がってくるので、木綿布団などより銀シートで遮断するほうが寝心地は良くなるように思えます。
夏場になって気温が上がってくると高温高湿度になって寝るのは結構厳しいかもしれません。
後生掛の大部屋は11月でも半袖シャツOKでしたがこちらは標高1100mくらいで外気温も低めだし6月で長袖トレーナーくらいの感じで、床の熱も比較的穏やかです。
ちなみに皆さん通路側に頭を向けて寝ます。
床下から有毒ガスが出てくる可能性もないでもなくて、壁側だと空気が滞留するので危険だからみたいです。
自炊の下ごしらえは水場・流し棟でやります。
ただし調理器具類、鍋釜食器一切ありませんので持参かレンタルになります。食事の加熱調理は大部屋の自分の領土内でやります。
常連は電気炊飯器を持ち込んで長期滞在していて、ゆえにコンセント前に陣取るのです。
中央通路脇に電気炊飯器とコンロがあれば長期常連と判断して間違う可能性はかなり少ないとみていいでしょう。
なお浴室棟の裏手に源泉槽があって、こちらで温泉卵や茹で山菜なんかを作ることが出来ます。
食事後の食器洗いは水場・流し棟と別に露天の流しがあってこちらでやるのですが、どうも多少加温された、秋口でもあまり冷たくないであろう水が出ています。
食器洗い洗剤は自分の訪問時には常備品と思しきものがありました。
冷蔵庫はきっぱりありません。
水場・流し棟の奥の水槽に流れる天然水冷却だけなので、キンキンに冷えたビールが飲みたい都会派のヒトは、娑婆でクーラーボックスに多量に氷を仕込んで宿入りすることになります。
オンザロックとか水割り好きな酒飲みは言うに及ばずです(が、遅くまで飲むのは大部屋湯治では厳禁です)
トイレは驚いたことに、さすがに温熱便座でもシャワートイレでも男女別でもありませんが普通にこぎれいな洋式水洗でした。たぶん水が豊富なのでしょう
風呂はオンドル大部屋と管理棟の間にあります。
2mちょっとくらいの木造りの湯船があるだけで、給湯溝に煉瓦が置いてあって、それで湯量を調整しつつ蛇口から加水して浴槽温度を調整します。湯船の加水、給湯はお客さんにほぼ任されていて、訪問時の浴槽温度は39℃~43℃とその時入っているお客さん次第になります。
お湯はほぼ無色透明(ごくかすかに濁りあり)の大人しい硫黄泉です。
50年通っているお客さん2人がコメントするには「昨シーズン湯温が下がってボーリングしなおした」「昨年くらいから管理人さんが変わって毎日湯を落として清掃・湯の張り直しをするようになった」「前はもっと湯の華が強烈だったが、湯質自体は変わりない」とのこと。
髪や体を洗うための蛇口・シャワーも、石鹸・シャンプーもない湯治湯ですが、ほぼ常時誰かが入浴していて、上の写真はほぼ奇跡的に独り占め状態になった瞬間の撮影です。
だいたい皆さん17時過ぎから夕食を、7時過ぎから朝食を始めるようです。
消灯時間は20時半というルールなのですがだいたい20時にはほぼ全滅状態になっていて、自分も率先してそれに参加しました。
そのかわりに朝は4時頃から活動開始する年寄りが多数いて、シーズン中などは7時前には多くの宿泊客が山菜取りに出撃して大部屋は無人に近くなったりします。
FOMAは大部屋内で2本くらい立っていてそこそこ快調です。
飲用の水はかなり美味いもので、ここに通って50年のオヤジが秋田一番だと自慢していました。
かなり納得感がありましたが、自分の好みでは栗駒仙人水のほうが一歩リードしてるような。。。
なんというか、たまたまシーズンだったこともあって、オンドル床に採取してきたワラビを広げて干しワラビを生産している常連泊まり客がいます。タケノコ皮むきや湯がきはもちろん日がな一日やっていて、湯治に来てるのか山菜加工品生産に来ているのか、といった感じもなくもありません。
隣のとっつぁんに茹で卵を貰ったり、後生掛よりこじんまりしている分和気あいあいな感じです。
早朝5時頃はホーホケキョ、7時頃からはカッコウが鳴く、超山奥の味わい深い湯治宿です。
そもそも電気毛布や電気敷布が苦手な自分はオンドルを3回経験しても得意にはなれないのですが、でも個人的好みですけど銭川でも後生掛でもなく、湯治のもともとの姿ってこんな風なんだろうな、と確信できるこちら大深温泉はまた泊まりに行きたくなりそうです。
つくづくオンドル苦手なんですけど。
ちなみに実はこちらは鹿角花輪の病院が経営しているお宿で、でもさすがに10月20日過ぎくらいから6月の第1週くらいまでは冬季休業になります。
外気温が低い頃、冬季休業直前直後あたりがねらい目かもしれません。