藤三旅館
東北(岩手県)格安温泉宿泊・自炊・湯治おぼえがき
花巻 鉛温泉
≪2017年02月宿泊≫(1泊)
うんと昔にお世話になったことがある当館なのですが、そういえば宿泊おぼえがきの当時の記事は凄く完成度が低かったなぁという忸怩たる思いにいたたまれなくなり、あらためて調査しに来ました。
自分の好みとしては当然自炊宿泊なのですが、当宿の湯治食がどんなものなのか知的探究心とレポーター魂に駆られて2食付き@5500+入湯税¥150のプランでお世話になることにしました。
もともとは自炊湯治宿だったであろうこちらも、マーケティング努力が功を奏して相当な有名旅館になり、高級な別館客室もできてかつての湯治湯の雰囲気からはかなり趣が変わりつつあります。
高級別館を建てるために湯治部に古くからあった男女別内湯の河鹿の湯を潰してしまっていて、昔からの湯治文化より宿泊収入を優先した経営方針になっているカタチです。
旅館部、湯治部、別館の収容人数に比して現3か所しかない風呂はナニゲに慢性処理能力不足な気がするノデスケド。
娑婆をウロウロして宿に着いたのは15時少し過ぎ、湯治部の前に駐車スペースがないのはわかっていたのですが、荷物を下ろしたくて湯治部まで下ったものの玄関前に郵便配達車両が横づけ停車中で、やむなく高級別館の十三月の前に仮停めしたら従業員さんが走ってきました。
センサーが反応してアラートが出るんだそうで、ちょっとだけねとお断りし荷物を帳場に運び込んで、50mほど上の宿泊者駐車場に上がって満車近いなかかろうじて駐車できました。
たぶん少なからず日帰り客の車と思われるのですが、日帰り客は節度を守ってちゃんと県道沿いの日帰り駐車場に駐車して欲しいものですな。
旅館部宿泊ならよく観光ガイドにのっている風情ある玄関から入館できて、たぶん玄関前に横付け駐車できるのではないかと思います。
帳場に入って宿帳を記入する間に荷物は従業員さんが部屋に運んでくれて、宿泊の心得説明とか宿泊オプション(暖房器具類、浴衣など)のチョイスをした後に部屋にご案内となります。
今回は季節がら暖房なしはさすがにつらいということでファンヒータ(1泊@500)だけをレンタルしました。
ちなみにコタツは部屋にはあるものの電源ケーブルを1日¥490くらいでレンタルしないと利用できず、今回はファンヒータがあれば十分だろうと判断したのですが、はじめから宿泊料金にコタツとかファンヒータ料金込みの宿泊プランもあるようです。
浴衣や丹前類は必要ないのですべてご遠慮しました。
下足は部屋まで持参して踏み込みに置くしきたりで、案内されたのは2階なかほど21号室でしたが、部屋に上がるまでも結構お客さんがウロウロしていて、さすが有名旅館でそこそこのご繁盛と見えます。
以前宿泊した時は殺風景で牢獄みたいな雰囲気だったけど、各部屋の入り口格子に暖簾がかけられたり廊下に蛇の目傘をあしらった照明を配したりで結構風情が出て良い雰囲気になっていました。
boroいという弱みをうまくアレンジして、レトロ感という強みに転換した好事例といえるでしょう。
格子戸をあけた踏み込みは1畳、ふすまの中は6畳敷きに床の間と濡れ縁2畳の客室なのですが、画期的というか新鮮なのは部屋のカギが南京錠なことです。
あえて南京錠にするあたりはなかなかやるなぁ、という感じだけど6年前は鍵さえない客室だったんですよね。
この5~6年で宿泊客を増やすために相当な努力というか客受けする演出をしているのがよくわかります。
室内設備は6チャンネル映る30インチくらいの無料テレビ、電源コードのないコタツ(必要なら別途有料)、金庫、濡れ縁にテーブルセットとお茶セットで、ファンヒータはオプションで追加でした。
濡れ縁にはかつて室内自炊だった頃の、作りつけのコンロ台の名残があります。
窓の外はちょうど自炊部玄関の玄関ひさしがせり出していて、窓を開けたらの雪の上に飲み物をおける好位置で、冷蔵庫要らずだったのはかなり嬉しい21号室でした。
寝具は羊毛敷き布団、羽毛掛け布団・毛布が2セット押し入れに入っていてセルフ敷きです。
アメニティ類はオプションなのでなにもありませんが、驚くことにフリーWiFiが飛んでいて快調にネットにつながります。
コンセントは床の間テレビ脇に2口×1に三又ソケットが刺さってTVとファンヒータで2口使用・2口フリーでした。
窓はシングルガラスでカーテンもないけど、濡れ縁と畳敷きの間の障子を閉めれば防寒的には大丈夫でしょう。
浴場内はいずれも宿の了解なしに撮影するのは禁止になっていて、男女交代になっている浴室が結構あります。
夕食を運んできた従業員さんに聞いたら他にお客さんがいるときは不可なのでそこのところ約束できればOKだそうで、まぁ常識といえば常識的な決まりごとなので安心してお約束をしたのでした。
当館で(というか岩手でも)有名な白猿の湯は、玄関から左手に進んで仕切り戸の手前に入り口があります。
実は入り口は浴室反対側にもあって、感覚的に玄関側の入り口は日帰り客と湯治客用、裏側の入り口は旅館客用みたいな造りで、入り口を入ると5~6mほど下に下って浴室フロアに着きます。
浴室の雰囲気はレトロで良いのですが訪問が日曜日の夕方だったので湯が鈍って汚れ気味だったこともあり浴感自体はイマイチ、翌日朝風呂はかなり湯質は回復して新鮮になってました。
白猿の湯には水蛇口だけしかなくて、石鹸使用不可になってます。
白猿の湯は女性専用時間が設けられていますが、混浴時間中はナニゲにワニっぽいおっさんがずーっと浴槽の縁に座っていました。
昔といってもほんの7~8年ほど前にはワニオヤジはいなかったし、皆おおらかに混浴してたのですが、窮屈なご時世になったものです。
女性専用時間にきそびれた日帰り湯のねぇちゃんが入浴を断念して残念がっていました。
なお女性専用時間になると従業員さんが見回りかねて女性専用中の暖簾をかけに来るので、間違って入浴する可能性はほとんどありません。
白糸の湯は旅館部の突き当りにある男女交代の内湯です。
シャワー付き混合栓が5~6基あり、シャンプー・ボディーソープありなのですが、備え付けのシャンプーのにおいがやけにキツい印象でした。
宿の能書きによれば当館の風呂はすべてかけ流しのハズなのですが、いずれの浴槽も給湯温度があまり高くなくて、どうすればこれで掛け流しできるのか不思議に思えてなりませんでした。
銀の湯は時間により貸し切りになったり男女入れ替えになったりする浴槽サイズ2.5mほどのこじんまりした浴室で、覗いてみただけです。
桂の湯は白猿の湯の裏側にある露天風呂併設の小奇麗な男女別浴室で、シャワー付き混合栓が3~4基、シャンプー・ボディーソープありです。
浴室にあった分析表によればこちらの湯は桂の湯+下の湯で源泉温度は41.7℃、給湯量はちょろちょろなのにこちらも掛け流しだそうで湯温を維持しているノウハウに興味がもたれます。
いずれの湯も源泉は桂の湯単体かそのブレンドで、良く言えば入りやすい、悪く言えば浴感の乏しい湯ではあります。
館内には河鹿の湯の案内表示がまだ残っていますが、高級別館十三月を建てるために潰したので今はもうありません。
自炊客用の共同炊事場は1階は閉鎖されて使えるのは2階だけになっています。
電子レンジ、コインコンロ、流し、鍋釜食器調理器具はそこそこあり、脇に流し場があって洗濯機もあり、玄関前に売店がありますが、扱っている商材など詳細は確認せずじまいです。
食事つき湯治宿泊の場合は夕食は17時~17時半、朝食は7時~7時半に各部屋に配達され、食べ終わったら部屋前に出すルールです。
宿泊客数が当館としては多くない日だったからなのか17時直後に配達が届きました。
酢のものにも漬物にも山芋が入ってて食べられなくて残念だったのですが、この近辺は山芋産地なんでしょうかね。
他には蟹の甲羅に入ったグラタンフライ、鮪刺身、鮭とホタテマリネといった料理に、ご飯は炊き加減はまずまずでコンビニおにぎり1.5個で、まぁ湯治でカロリーを使うことは少ないからこれぐらいでも良いかもしれません。
膳に刺身醤油の小皿があったほかは当然ながら調味料類はないので、味付けに好みがある場合は自分で調味料を持参する必要があります。
自分はチキンカツと白和えもソースも辛子も準備万端でしたが。
朝食は7時過ぎ配達で、陶板焼きで作る目玉焼きはなかなか美味かったです。
ちなみにお湯とかお茶は、帳場に行けば新しいのをもらえる雰囲気でした。
基本湯治宿なので、21時からは静かにするルールになっていて、うるさい客は追い出される(笑)ようでまことに結構なことです。
接客は高級ではないもののそこそこ礼儀もありフレンドリーでもあり、なかなかトレーニングされているようでした。
まぁレトロと見るかぼろいと感じるかは人それぞれながら、古い建物を上手くアレンジして良い味を出している素晴らしい努力は賞賛されます。
もっとも各種演出とかブランドが割高なのか、宿泊料金に対する実質的な料理内容や設備そのものの充実度はいまいちでコストパフォーマンスは必ずしも良いとは言えなさそうです。